タウンエース・ワゴン 【1982〜1996】

小型ワンボックスワゴンの定番となった2代目

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RVとしての特性を際立たせたキャブオーバー車を企画

 アウトドアレジャーが浸透した1980年代初頭の日本では、フィールドまでの足、すなわちクルマに対するユーザーニーズも変化した。家族や友人など多人数が乗車できて、しかも大量の荷物が積めてその積み下ろしも楽なクルマが求められたのだ。これらの条件を満たすモデルとして脚光を浴びたのが、キャブオーバー車だった。

 従来はビジネスユースが主流だったキャブオーバー車は、乗用車としてのキャラクターが必要になった。商用車とは一線を画すスタイルの演出に快適な乗り心地、そして多人数が楽しく過ごせる室内空間などの具現化が望まれたのだ。こうした需要に対して自動車メーカーは、蓄積してきたバン造りの技術に乗用車のノウハウを加えながら、新しいキャブオーバー型のワゴンを企画する。

品質感と走行性能が飛躍的に高まった2代目の登場

 1980年代に向けたトヨタの新型キャブオーバー車は、2代目のタウンエース・シリーズとして1982年11月に市場に放たれる。
 エクステリアは、異形2灯式ヘッドランプや大型PP(ポリプロビレン)バンパーなどを組み込んでスタイリッシュさを創出。ルーフ形状はハイルーフ/ハイルーフ・ツインムーンルーフ付/ミドルルーフ/ミドルルーフ・ツインムーンルーフ付という計4タイプを設定する。

 キャビンは、フロントオーバーハングの延長およびフロントウィンドウ傾斜角の見直し(40度)、シート形状の改良などにより居住性をアップ。また、3列式シートの豊富なバリエーションや上質なフルファブリックトリム、エアコン吹出口を一体化した成形天井、フロアパネル埋込式のビルトインリアヒーター、エンジン回転数感応型のパワーステアリング、視認性に優れるエレクトロニックディスプレイメーター、製氷・冷蔵・温蔵の3機能を備えた世界初のアイスメーカー付冷温蔵庫などのアイテムを設定し、クラス随一の高機能性と快適性を具現化した。

 搭載エンジンはキャブオーバー型ワゴン用に開発したレーザー2Y-U型1812cc直4OHV(95ps/15.5kg・m)を採用し、トランスミッションにはオールシンクロ5速MTのほかに同クラス初のOD付4速ATを組み合わせる。懸架機構も注目で、フロントサスには専用セッティングのウィッシュボーン式トーションバースプリングを、リアサスにはクラス初のラテラルロッド付4リンク式コイルスプリングを採用。また、やはりクラス初の装備として前後スタビライザーもセットした。

約14年に渡って小型キャブオーバーワゴン市場を牽引

 上質感が高まった内外装に優れた走行性能を有した2代目タウンエース・ワゴンは、ロイヤルラウンジを筆頭にグランドエクストラ/スーパーエクストラ/キャニオン/カスタム/デラックスという6グレード/20車型する豊富な車種ラインアップも功を奏し、順調に販売台数を伸ばしていく。この勢いを維持し、クラスの絶対的なリーダー車に成長させようと、開発陣はさらなる車種設定の拡大と緻密な改良を図っていった。

 1983年4月には、ディーゼルエンジン(2C型1974cc直4OHCディーゼル、72ps/12.8kg・m)を設定。翌5月になると、2Lガソリンエンジン(3Y-E型1998cc直4OHV、115ps/18.3kg・m)搭載車がラインアップに加わる。1985年8月には大がかりなマイナーチェンジを実施。内外装の近代化やスカイライトルーフの設定、ディーゼルターボエンジン(2C-T型1974cc直4OHCディーゼルターボ、88ps/17.0kg・m)の採用、操舵機構のラック&ピニオン化などを行い、3カ月後の11月にはパートタイム4WD車を追加した。さらに1988年8月になると、再びビッグマイナーチェンジが敢行される。内外装ではさらなる高級化と利便性の向上を実現。また、搭載エンジンの改良やTEMS(Toyota Electric Modulated Suspension)の導入などを行って走行性能をアップさせた。

 車両編成が大きく変わったのは、1992年1月のマイナーチェンジ時だった。ここでライトエースとの一元化が図られ、同時に兄弟車のマスターエース・サーフは廃止となる。グレード展開では、最上級モデルとなるロイヤルラウンジリミテッドを設定した。さらに1993年8月には、ディーゼルターボを3C-T型(2184cc直4OHCディーゼルターボ)に換装。同時に、フィールドツアラー仕様を加えた。
 時代に則したアップデートを行いながら、キャブオーバー型ワゴンの定番モデルに成長した2代目タウンエースは、1996年10月になると実質的な後継車となるセミキャブスタイルのタウンエース・ノアにバトンタッチ。約14年の長きに渡る車歴に幕を閉じたのである。