日産デザイン12 【1990,1991,1992】

新しい感覚を取り入れた1990年代初頭の小型車群

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“スモールの革命”を謳った7代目サニー

 1990年代に技術で世界一になることを目標とする“901運動”を展開していた日産自動車は、デザインの分野でも積極的な革新を図る。スポーツカーや高級車だけでなく小型車クラスにおいても車両デザインの全面刷新を精力的に行った。
 1990年1月には、7代目となるサニー(B13型系)を発表した。エクステリアに関しては、“SIMPLE 高密度スタイル”をテーマにバランスのとれた3BOXフォルムを構築。具体的には、面の張りをきかせた立体感あふれるサーフェス、フルドアや3次曲面で仕立てた滑らかなキャビンまわりのライン、端正で存在感のあるリアビュー、そして光沢のある高品位仕上げのボディ塗装などで仕立てた。一方、内装については“SMART 高感度インテリア”を主題に、色/艶/絞(シボ)をバランスよく配したキャビンスペースを創出する。インパネからドアトリムにかけては流れを持たせた一体ラインで構成。そのうえで、操作性に配慮したステアリングおよびペダル配置や視認性を向上させたメーター、乗員を優しく包み込むシートなどを採用した。

 7代目サニーではエクステリア/インテリア/フットワークを好みに合わせて選択できる新たなコーディネート方法、“SUPER SELECTION”も設定された。基本構成は“ラグジュアリー”と“スポーティ(GT-S)”の2タイプ。ラグジュアリーでは外装にブライトモールディングやフロントぼかしガラス、内装に4本スポーク合皮巻きステアリングや専用シート、前後センターアームレストなどを、スポーティでは外装にエアロパーツやプロジェクターフォグランプ、内装にスポーツシートや3本スポーク本革巻きステアリングなどを装備していた。

スペシャルな雰囲気を表現したNXクーペ

 日産は7代目サニーのデビューと同時に、小型スペシャルティを発表する。サニーのシャシーをベースに3ドアハッチバッククーペのボディを組み合わせた「NXクーペ」(B13型系)だ。
 スタイリングは、セクレタリーカー(インテリジェントな女性が好んで乗る低価格でスタイリッシュなコンパクトカー)の本場である米国のNDI(日産デザインインターナショナル)が手がけた。グリルレスのフロントマスクには楕円形のヘッドランプを組み込み、大きくスラントしたノーズと相まって個性的な顔を創出する。サイドは流麗かつ抑揚のあるラインでスポーティ感を強調。リアスポイラーをボディの一部としてアレンジした点も、当時としては目新しかった。

 インテリアについては、ベース車となるB13型系サニーのパーツを流用しながら、各部にスタイリッシュクーペらしいアレンジを加える。メーターに関してはファッショナブルな感覚を重視し、スピードメーターを囲むように楕円形のバーグラフ式タコメーターをレイアウトする。一方、スポーティグレード用には大型で見やすいアナログメーターを装備していた。

3タイプのボディで個性を打ち出した4代目パルサー

 1990年8月になると、4代目パルサーが市場デビューを果たす。ボディタイプは3ドアハッチバックと5ドアハッチバック(5ドアセダンと呼称)、4ドアセダンの3種類を設定した。3ドアハッチバックはリアオーバーハングを切り詰めると同時にCピラーおよびリアウィンドウに角度をつけて精悍なフォルムを構築する。一方、4ドアセダンは伸びやかな3BOXフォルムや張りのある面構成などでシックなエクステリアを創出。5ドアハッチバックは4ドアセダンをベースにハッチバック化を実施し、機能的な造形を実現した。

 インテリアについては、ドライバーを中心に据えたラウンディッシュなインパネおよびセンター部や確かなホールド感と安定した着座姿勢が得られる前席バケットシート、腰や背中を優しく受けとめる形状としたうえで6対4分割可倒機構を組み込んだリアシートなどを特長とする。また、内装色はスポーティグレードにグレー系やブラック系を、カジュアルおよびベーシックグレードに明るめのグレー系やベージュ系を採用していた。

“タウン・スモール”という発想で磨かれた2代目マーチ

 1992年1月には、日産のエントリーラインを支えるコンパクトカーのマーチが第2世代のK11型系に切り替わる。新しいタウン・スモールを標榜した2代目は、3ドアと5ドアの2種のハッチバックボディを設定。スタイリングは丸みのある3次曲面のガラスやフルドア、ふくよかで一体感のあるボディライン、親しみのわく優しいフロントマスク、バラエティ豊かなカラーリングなどで構成した。

 インテリアは、2360mmという長めのホイールベースと余裕を持たせたヘッドルームで広いキャビンルームを構築したうえで、緩やかな曲面でアレンジしたインパネや、手もとに接近させたスイッチ類などによって快適かつ機能的な居住空間を創出する。前席にはラウンディッシュ形状の専用シートを装着。スポーティ仕様にはサイドのサポート性を高めたローバックシートをセットする。上級グレードの後席には、6対4分割のスプリットシートを組み込んでいた。