スカイライン 【1963,1964,1965,1966,1967,1968】

メンテナンスフリーを謳った高品位モデル

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小型ファミリーカーとして再出発した2代目

 スカイラインの走りの血統を準備し、決定づけた名車が1963年9月に登場した2代目スカイラインである。S50型の車両型式を持つ2代目は、初代と共通するのはネーミングのみ、といっていいほどすべてを一新していた。

 まずは車両ポジショニングそのものが異なっている。2代目のS50型スカイラインは、メインターゲットをファミリー層に置いた1.5Lクラスの小型サルーンだった。ライバルはコロナ、ブルーバードだ。しかし初代は、フォーマルカーとしても使える堂々とした高級車だった。エンジン排気量もデビュー当初の1957年は1.5Lだったが、小型車枠が2Lまで拡大されると主力を1.9Lに拡大している。しかしプリンスは初代スカイラインをベースとした上級モデルとしてグロリアを開発した。このため2代目は市場での競合を避ける意味もあって純ファミリーカーとして企画し直したのである。背景にはクルマを取り巻く環境の変化があった。初代登場当時は法人層やタクシーが主流で、個人ユーザーは少数派だった。しかし1960年代に入りファミリーカーとしてクルマを購入するオーナードライバー層が目立って増えてきていたのだ。

高い技術力が生んだメンテナンスフリー発想

 S50型スカイラインのメカニズムはオーソドックスだった。車両のスリーサイズは4100×1495×1435mm(DX)とクラス平均で、パワーユニットはプリンス伝統のG-1型1.5L直4OHVユニット(70ps/11.5kg・m)を搭載。足回りはフロントがウィッシュボーン、リアは初代の凝ったド・ディオンアクスルではなくシンプルなリーフリジッドを採用していた。全体的に冒険を避け、しっかりとした作り込みによって完成度を高める手法である。しかし高い技術レベルをセールスポイントにするプリンス自動車の作品らしく、S50型スカイラインには、数々の特徴があった。

 最大のポイントはメンテナンスフリー化である。当時のクルマは走行に応じて頻繁なメンテナンスを必要とした。走行距離にもよるが1ヶ月に1度は整備工場に持っていくのが当たり前だった。しかしS50型スカイラインは、それを不要とした。エンジンはタペット調整などが2年または4万kmはいらない“封印エンジン”で、同時に補機類の無給油化も促進。ウォーターポンプやディストリビューターは6万km無給油。ジェネレーターはAC式の採用により10万kmもの間、ブラシ点検を不要とした。足回り各部のグリスアップも3万kmまたは1年間は不要だった。普段はガソリンを補給するだけ、ときどきオイルと水量を確認しておけばS50型スカイラインは気持ちよく走ることができた。現代のクルマでは当たり前のメンテナンスフリーを、日本車で最も早く実現したのがスカイラインだったのだ。

高い基本性能がスカG誕生を準備

 ボディは強靱かつ軽量なモノコック構造で、室内各部にもスカイラインらしい配慮を満載していた。無反射ガラスを採用したメーターは、どんな状況でも見やすい設計で、しかもプリント式配線基盤により耐久性も計算していた。前席の位置を車体の重心位置と一致させ、クルマの挙動を感じ取りやすくしていたのもプリンスらしい。ちなみにDXグレードの前席はセパレート式。前後スライド(110mm)に応じてシート高が自動的に変化する傾斜スライドレールを組み込んでいた。豪華さも一級品だった。シート生地やドアトリムは上質な織物張り。DXではラジオや時計も標準で装備する。S50型スカイラインは車両サイズこそ小型化していたが、すべてが上級クラスと同等の高い質感を持ったクルマだったのだ。

 走りも目立っていた。トップスピードは135km/h。この数字は瞬間最高速ではなく巡航可能速度だった。加速も鋭く、3速コラムシフトながら俊敏な振る舞いで多くのユーザーを魅了した。S50型スカイラインは、1964年5月の第2回日本グランプリでデビューするS54型初代スカイラインGTのベースとなったが、元々の走りがいいためGTの企画が誕生したのである。ちなみにS50型自身、第2回日本グランプリの1300〜1600ccクラスで1位から8位までを独占し圧倒的な強さを見せつけている。

名機G15型を得てスカイラインらしさを主張

 S50型スカイラインは、日産自動車との合併直後の1966年10月のマイナーチェンジを経て、1967年8月に一段と魅力を鮮明にする。エンジンを従来のOHVユニットから、新設計のOHCユニットに積み替えたのだ。新エンジンは名機の誉れ高い“G15型”。高効率のクロスフロー式の吸排気バルブを持ち、1.5Lの排気量から88psのハイパワーを発揮した。従来のG-1型の70psと比較するとその高出力ぶりが理解できる。

 G15型はパワフルであると同時に、燃費性能にも優れていたのが特徴で、当時の日本車のエンジンのなかで最も評価の高いパワーユニットのひとつだった。G15型は、モデルチェンジ版のC110系、C210系にも継承されスカイラインの主力エンジンとして熟成が図られた。また1.8L仕様のG18型(100ps)はローレルに搭載され1968年4月にデビューを飾っている。