日本カー・オブ・ザ・イヤーの歴史03 【1990,1991,1992】

技術先進の国際車として発展

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3ナンバー国際車の登場

 1990年代初頭は、日本自動車界にとっての“ヴィンテージ・イヤー”だ。技術的な成熟と、バブル経済の恩恵による潤沢な開発費用により世界をリードするエポックメイキングなクルマが続々と輩出された。また税制の変更により3ナンバー車の税額が引き下げられたことにより、BIGサイズ・モデルが一般的になったのもニュースだった。

 1990-91年のイヤーカーは「三菱ディアマンテ」が獲得する。ディアマンテは先進技術を傾注したアッパーミドルカーで、堂々とした3ナンバーサイズの4ドアHTボディを持っていた。パーソナル感覚に溢れるスタイリングも魅力だったが、特徴はエンジンから駆動システムまで、すべてが意欲的だったこと。

 搭載する主力パワーユニットは新開発V6DOHC24Vで2.5L版(175ps)、3L版(210ps)の2種が設定された。このクラスのサルーンに期待される静粛性&スムーズさとともに、伸びやかなパワーを両立した完成度の高いエンジンは、税制の関係で2Lが事実上の上限だったいままでのミドルサルーンとは次元の違う走りをもたらした。贅を尽くした広い室内空間とともに、乗った者が素直に“上質”を実感できるクルマだったのだ。

 センターデフ方式のフルタイム4WDシステムを設定し、路面状況を問わない安定した走りを実現したのも訴求ポイントだった。商品性の高さはメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズと同等。日本のアッパーサルーンが国際車になったのは、このディアマンテ以降かもしれない。

スーパーカーを革新したNSX

 ディアマンテ以外でも注目モデルは多かった。10ベストカーに選出された顔ぶれは、「トヨタ・エスティマ」、「ホンダNSX」、「日産プリメーラ」、「ユーノス・コスモ」など意欲作ばかり。なかでも特別賞を受賞したエスティマは、ミニバンという現代に続くムーブメントを創造した点が評価された。広い室内空間と優れたフットワークを生み出す専用ミッドシップ・シャシーなど、その設計は現在でも斬新そのもの。クリーンなスタイリングもコンセプトの先進性を見事に表現していた。

 先進性という面ではNSXも忘れられない。日本車初のスーパースポーツとなるNSXは、フェラーリやポルシェと同等のパフォーマンスを、誰もが楽しめることを目的に開発された。超軽量アールアルミボディの採用など、技術的なチャレンジ項目も多かったが、なによりスーパースポーツらしからぬ運転のしやすさ、快適性、そして信頼性の高さが光った。

 NSXは真夏でもACがきちんと効き、渋滞路を苦にしないトラブルフリーのスーパースポーツだった。一部のマニアのためのストイックな存在だったスーパースポーツを、最新技術の頂点に変えたのはNSXの功績といって言い。ポルシェやフェラーリのクオリティがぐっと向上したのはNSXが新しい価値観を持ち込んだからである。

フレッシュさで輝いたシビック

 1991-92年は、フレッシュさが印象的な年だった。イヤーカーを受賞したのは「ホンダ・シビック」である。通称“スポーツ・シビック”と呼ばれる4代目モデルだ。走りを予感させるダイナミックなスタイリングはホンダの面目躍如ともいえる仕上がりで、スポーティさを前面に押し出したHBは前席優先パッケージ、セダンのフェリオはBIGキャビンを採用。キャラクターをしっかりと分けた造型が目を引いた。

 メカニズム面でもホンダ得意のVTEC機構をスポーツモデルだけでなく、燃費指向の主力モデルにも採用した。サスペンションは全車とも4輪ダブルウィッシュボーン式で、キビキビ感とともにストロークを十分に確保した新世代。スポーツ・シビックは人気が高いモデルだが、それは個性明快で、しかも各部の完成度が非常に高いからである。

特別賞は自由な生活を象徴

 10ベストカーも個性派が揃った。「トヨタ・クラウン&アリスト」、「日産ブルーバード」といった伝統ブランドもあったが、目をひくのは「アンフィニRX-7」、「ホンダ・ビート」。「スズキ・カプチーノ」といったスポーツカー群。なかでも自由発想の軽自動車、ビートとカプチーノは光った。徹底的にライブな走り味を追求したミッドシップ・オープンのビート。小型サイズながらFR&4輪ダブルウィッシュボーン式サスの本格レイアウトを持ち、鮮烈な速さが印象的だったカプチーノと、同一ジャンルながらキャラクターがはっきりと違うのも見事だった。

 特別賞を受賞した「三菱パジェロ」にも時代の勢いを感じた。余暇の広がりからアウトドアに注目が集まるなか、最適のチョイスが2代目パジェロだった。パリダカなどの国際競技で鍛え上げたメカニズムは堅牢そのものながら、フルタイム4WD機構や、豊富なアメニティ装備を満載。ファーストカーとしても満足度の高いマルチモデルに仕上がっていた。販売も絶好調で、週末の高速道路は背の高いパジェロで埋め尽くされるほど。人と自然、そしてクルマの関係を濃密にした忘れられない存在である。