ファンカーゴ 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005】

楽しさ満載! 夢たっぷりのマルチビークル

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開発コンセプトは“夢と遊びを広げる空間”

 1999年8月に誕生したファンカーゴは、使いこなす楽しさとトヨタならではの信頼性が融合した新世代マルチビークルだった。1997年の東京モーターショーに同名で出品されたコンセプトモデルの市販化で、メカニカルコンポーネンツの多くをヴィッツと共用している。

 ファンカーゴの開発コンセプトは「夢と遊びを広げる空間」の提供である。ヴィッツの全長を伸ばして単純にワゴン化するのではなく、高さ方向にも拡大を図り全方位で余裕ある室内空間を実現したのが特徴だ。室内を移動空間としてだけ捉えるのではなく、移動先でクルマを止めて部屋のように様々に活用できる自由空間としても考えた結果、全長3860mmのコンパクトサイズとは思えないユーティリティを実現。本当に“使える”クルマに仕上げていた。

横開き式リアゲートを採用した理由とは!?

 短いフロントノーズから大きく傾斜したフロントピラーを経て縦長のリアランプで収斂するスタイリングは、どこか人間臭さを感じさせるキュートな仕上がり。ファンカーゴのネーミングどおり、楽しくしかも使い勝手の良さを連想する造形にまとめていた。

 ボディのスリーサイズは全長3860mm×全幅1660mm×全高1680mm(4WD1690mm)で、ヴィッツと比較すると250mm長く180mm(4WD190mm)背が高くなっていた。ちなみに幅は共通。2500mmに設定されたホイールベースはヴィッツより130mm長い。

 ボディはヒンジ式の4ドアと、横開き式リアゲートを組み合わせた5ドアワゴン。リアゲートを横開きタイプとしたのは、狭い場所での使い勝手を考慮した選択だった。全高が高いためリアゲート自体が大型サイズとなり、通常の上開きタイプでは開口時に後方に大きなスペースを必要としたからだ。

 しかし、それだけではなく、開発者によれば乗降性も考慮した結果だったと言う。ファンカーゴは前述のように移動先で部屋のように使えるクルマを目指していた。ラゲッジスペースは荷物を積むスペースというだけでなく、ユーザーがライフスタイルに合わせて使いこなす自由空間だったのだ。だからこそ荷物だけでなく人の乗降も考えた横開き式のリアゲートを採用したのである。

アイデア満載のフリースペースの持ち主

 ファンカーゴの室内は本当に広かった。とくに高さ方向に余裕があるのが特徴で室内高は1290mmも確保。しかもコラム式のシフトセレクターと足踏み式パーキングブレーキの採用で前席から後席へのウォークスルーも自在だった。まさに開放感たっぷりのワンルームと言えた。前席のヒップポイント高を630mmに設定し、自然な姿勢のまま乗降できたのも魅力だった。

 もちろんそれだけではない。ファンカーゴの白眉は、魔法のような巧みな後席アレンジにあった。3分割構造の後席は4段階のリクライニングとともに、ヘッドレストを装着したままでフロア下に収納でき、中央席は取り外しも自在だった。後席を収納してしまうと、大人がゆったりと横になれる長さ1780mmの大空間が出現した。

 その広さはまさに圧倒的で、カタログでは、プライベートシアタールームやキャンピングカー、スモールオフィスなどの多彩な使い方も紹介していた。ファンカーゴの室内は、大量のラゲッジを積めるのはもちろんだが、アクティブなライフスタイルをサポートする様々な可能性を秘めた空間だったのである。

フローリングフロアをオプションで用意

 ファンカーゴの奥行き1780mm、高さ1280mmのフリースペースは魅力的。カタログでは、部屋としての活用をサポートする多彩なオプションを紹介する。なかでもフリースペースをそっくりカバーするフローリング調のユーティリティベースキットはユニークだった。さまざまなアタッチメントを装着できるベースレール付きで、装着するとまさに部屋に変身した。

 この他にも天井に装着するアジャスタブルバーや、前席とフリースペースを区切るセパレーションネット、外部電源入力システムなど豊富なアイテムを用意。ファンカーゴはオプションアイテムも、コンパクトワゴンの概念を超えた自由発想を貫いていた。

走りはしっかり欧州車感覚

 ファンカーゴは走りもしっかりとしていた。エンジンは排気量1298ccの2NZ-FE型・DOHC16V(88ps/6000rpm)と1496ccの1NZ-FE型・DOHC16V(110ps/6000rpm、4WD仕様は105ps/6000rpm)の2種。トランスミッションは全車に電子制御式4速オートマチックを組み合わせていた。

 サブフレーム付きとしたフロントがストラット式、リアがトーションビーム式(4WDは4リンク式)の足回りはストロークをたっぷりと確保したしなやかな設定で、欧州車と同質の味わいがあった。

 ファンカーゴはまじめなトヨタが放った遊びゴコロたっぷりの自由発想モデルだった。自在に活用できる室内空間とキビキビとした走りで、スマッシュヒットに成長する。ただし商用車を連想する“ファンカーゴ”というネーミングだけは賛否が分かれたようで、2005年10月のモデルチェンジで“ラクティス”という新ネーミングに切り替えた。