グロリア 【1979,1980,1981,1982,1983】

国産乗用車初のターボ搭載パワフルサルーン

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直線基調のスタリングを採用

 グロリアの名を持つ高級サルーンが登場したのは1959年1月。旧・立川飛行機系のプリンス自動車が1957年4月に発表した最初のスカイラインを高級化し、3ナンバーモデルとして1.9リッターの直列4気筒エンジンを搭載したモデルだった。栄光とか頌栄などの意味を持つグロリア(Gloria)の車名は、当時の皇太子御成婚を記念して命名された。

 その後、プリンス自動車は1966年8月に日産自動車と合併する。グロリアは1967年4月に3世代目となるA30型(縦目)を経て、1971年2月の4世代目への移行に伴い、生産の合理化を図るため、同クラスのニッサン・セドリック系とボディやエンジンを共用するバッジエンジニアリングを採用する。両車の違いと言えば、ラジエターグリルの意匠とテールライトのデザイン、細かな室内儀装であり、事実上同一のモデルとなった。その後もグロリアはセドリックの兄弟車として進化を遂げる。

 1979年6月にデビューしたグロリア(430型)は、旧プリンス自動車時代から数えて6世代目となるモデルとなった。エンジンやシャシー、サスペンションなど主要なメカニズムはセドリック系と共用しており、スタイリングも旧型のコークボトルラインの曲線を多用したものから、直線基調のシャープなイメージとなった。また、旧型ではカタログから消えていたステーションワゴン仕様が復活し、替わりに2ドアハードトップ仕様が消滅。このクラスでは4ドアハードトップが主流になったためである。

当初のフラッグシップは2.8リッター直6エンジン

 大きな変化はリアサスペンションで、縦置きリーフスプリングによる固定軸に代わって、同じ固定方式ではあるがコイルスプリングを使った5リンク方式になった。この変更で乗り心地の大幅な改善を果たした。装備面では一部車種にラジオ番組の先行予約や走行速度による走行可能距離などを表示するドライブコンピューターを採用した。

 搭載されるエンジンは、当初は旧型からのキャリーオーバーで、排気量2753㏄の直列6気筒SOHC(L28E型、出力145ps/5200rpm)を筆頭に1998㏄の直列6気筒SOHC(L20E型、130ps/6000rpm)、同じく排気量1998㏄の直列6気筒SOHC(L20型、出力115ps/5600rpm)があり、ディーゼル仕様は排気量2164㏄の直列4気筒OHV(SD22型、65ps/4000rpm)と都合4種類のエンジンがラインアップされていた。トランスミッションは3速オートマチック(フロアシフトとコラムシフトが選定可)、オーバードライブ付きの4速/5速マニュアルがあった。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動で4輪駆動仕様はない。

 デビューから4カ月の1979年10月、2.8リッター直6ディーゼル(LD28型、91ps/4600rpm)がラインアップに加わり、同年12月には国産初のターボエンジン(L20ET型、145ps/5600rpm)が登場している。ターボはグロリアの大柄なボディをダイナミックに走らせる高いポテンシャルを持っていた。このクルマ以降、日本の自動車シーンは,ターボ=高性能が定着する。

静かなキャビンを追求した高品質

 430型では豊富な先進装備とともに、静粛性もアピールされた。とくにグロリアには、「サイレント・グロリア」というキャッチコピーが用いられた。静粛性対策の一部を紹介すると、ロードノイズ低減のため足回りにテンションロッドを採用したほか、排気系の透過音を低減する2重管式フロントチューブ(6気筒のみ)を導入、風切り音を予防するピラーとモールのフラッシュサーフェス化、ルーフ部の板厚アップ、2重遮音材を実施した。取り組みは多岐に渡り、「技術の日産の持てる力を傾注し、名実ともに静粛なサイレント空間を実現した」と当時のカタログには記されていた。

走りと快適性を磨き上げた足回り

 サスペンションは前記のように前がダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、後が5リンク/コイルスプリングに進化し、ロードホールディング能力と乗り心地は大幅に向上した。ブレーキは車種やグレードにより、前がベンチレーテッドディスクで後ろがディスクの組み合わせや、前ディスク&後ろドラムの組み合わせがあった。上級モデルには185SR14サイズのラジアルタイヤが標準装備された。

 その後の430型グロリアは、マイナーチェンジやエンジンの変更、限定車種などを加えながら、1983年6月に次世代モデルであるY30系にフルモデルチェンジされる。
 430型の直線を基調としたスタイリングは、生産性向上を狙ったものであった。サイズ以上に大きく立派に感じさせたのも事実で、車格に相応しいプレステージ性を発揮した。今となっては個性的なモデルと言える。