ブルーバードU2000GT 【1973,1974,1975,1976】

ストレート6エンジンを搭載した上級版“青い鳥”

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BC戦争での新たな展開

 1967年8月に発売された510型系ブルーバードは、スポーティなスタイリングや卓越した動力性能、そして同クラスのライバル車にはない四輪独立懸架の足回りなどがユーザーの心を大いに惹きつけ、販売台数を飛躍的に伸ばしていった。
 この状況に対して最大のライバルであるトヨタ自工も、コロナのゴールデン・シリーズの追加や価格引き下げなどを断行し、販売台数の伸びを図る。ブルーバードも負けてはいない。1968年10月にはダイナミック・シリーズを追加し、翌月にはクーペを発表。マイナーチェンジも頻繁に繰り返し、クルマの新鮮味を維持し続けた。

 マスコミ界では“BC(ブルーバード/コロナ)戦争”と呼ばれた日産とトヨタの激烈なシェア争いは、1972年1月にデビューしたニューモデルによって新たなステージに突入する。高速道路網の伸長や一般道の舗装化に起因するクルマの高性能化への要望、さらに従来のマイカーのひとクラス上をいく上級モデルの需要増に対応したトヨタ自工の新型車、2代目コロナ・マークIIのLシリーズが市場デビューを果たしたのだ。引き伸ばされたノーズに積み込んだエンジンはクラウンにも採用されるM型1988cc直6OHC。大型化したボディや三角窓を廃したスタイリッシュなエクステリア、さらに上級感あふれるインテリアを内包したコロナ・マークIIのLシリーズは当時の上級指向ユーザーの心をしっかりとつかみ、たちまち人気モデルに昇華していった。

コロナ・マークIIに対抗するために−−

 すでにブルーバードは、コロナ・マークIIに対抗するモデルを発売していた。従来のブルーバード・シリーズだけでは難しい。新たな上級小型車として1971年8月に送り出したブルーバードUである。型式を610に一新し、ユーザー・オリエンテッドの頭文字である“U”のサブネームを付けた意欲作だった。

 ブルーバードUは既存のブルーバードとは一線を画し、上級指向のユーザーの要望に則したアレンジを随所に施す。ボディタイプは4ドアセダン/2ドアハードトップ/ワゴン&バンの3種類。廉価版の2ドアセダンを設定しなかったのは、上級化の表れだった。510型ブルーバードより大型化したエクステリアは、スラントしたノーズに三角窓を廃したウィンドウグラフィック、流れるようなボディラインなどでラグジュアリー感を主張。またハードトップには、“Jライン”と称するスポーティなサイドウィンドウ下ガーニッシュを装着し、従来のブルーバードとは異なる個性を強調した。インテリアに関しても510型ブルーバードとは趣を変え、高級素材の内装クロスや新形状のインパネ、後席空間の拡大などを実施する。

 一方、高性能の要となる搭載エンジンについては、L16型(シングルキャブ仕様/ツインキャブ仕様)とL18型(シングルキャブ仕様/ツインキャブ仕様/電子制御燃料噴射仕様=L18E)という4気筒だけの設定で、コロナ・マークIIが後に追加する6気筒エンジンはラインアップされていなかった。スカイライン2000GTを持つ日産はブルーバード・クラスのクルマには6気筒エンジンを採用しない……そんな憶測がユーザーのあいだで流れる。しかし、開発側では着々と6気筒エンジン搭載の車両レイアウトを企画していた−−。

2000GTシリーズのデビュー

 1973年8月、ブルーバードUはマイナーチェンジを実施し、ほぼ同時期に上級モデルの真打ちといえる6気筒エンジン搭載モデルをデビューさせる。シリーズ名は「2000GT」。ボディタイプは4ドアセダンと2ドアハードトップの2種で、肝心のエンジンにはL20型1998cc直6OHC(シングルキャブ仕様115ps/16.5kg・m、ツインキャブ仕様125ps/17.0kg・m)を採用した。組み合わせるミッションは、シングルキャブ仕様が5速MT/4速MT/ニッサンマチック(3速AT)を、ツインキャブ仕様が5速MT/ニッサンマチック(3速AT)を用意。グレード名はシングルキャブ仕様がGT、ツインキャブ仕様がGT-Xを名乗った。

 ストレート6エンジンを搭載するにあたり、開発陣は既存ボディに大改良を施した。ノーズ部は長い6気筒エンジンを積むために延長。同時にホイールベースも150mmほど伸ばし(2650mm)、結果的にボディ長は従来比+205mmの4420mmにまで拡大される。走行安定性を引き上げるために、フロントのトレッドも広げられた。

精悍なスタイリングで高性能を主張

 内外装に関しても、最上級モデルらしいリファインが施される。エクステリアは独立したヘッドランプと縦型グリルを装着したフロントマスクに専用デザインの大型テールランプ&フィニッシャー、リング付きのキャップレスホイールなどでアレンジ。ボディカラーはメタリック6色、ソリッド1色の計7色を取りそろえる。インテリアに関しては革巻きの3本スポークステアリングや角型デザインのメーター、うね織りクロス(横糸の浮き沈みが不規則になっている織り方)のシート地、センターアームレスト付きリアシート、間欠ワイパー、リモートコントロール式フェンダーミラー、トランクオープナー、FMラジオなどを装備し、高性能モデルであることをエクイップメント面で強調した。

 メカニズムについては、シリーズ全体にバリアブルレシオ・ステアリングギア(19.0〜22.5)や高速扁平タイヤ(標準は6.45S14-4PR。オプションとして175/70HR14を用意)、前輪大型ディスクブレーキ、3ジョイント・プロペラシャフトなどの新機構が盛り込まれる。またGT-Xの5速MT車では、強化サスペンションの採用やファイナルレシオの変更(4.375)が実施された。

2000GTシリーズの愛称は「サメブル」

 市場に放たれたブルーバードUの2000GTシリーズは、その特異なルックスから「サメ(鮫)ブル」の愛称がつき、コアなファンを獲得する。一方、走りに関しては賛否両論で、6気筒エンジンのスムーズさと力強い加速は好評価を得たものの、フロントヘビーの重量配分によるコーナリング性能の悪化にはマイナス点がつけられた。

 2000GTシリーズの追加で上級小型車としてのイメージアップを図ったブルーバードU。しかし、販売成績の面ではライバルのコロナ・マークIIに及ばず、さらに排気ガス規制対策に予算と人員を割かれたために大規模なリファインや車種追加もままならなかった。結果的にブルーバードUは1976年7月にフルモデルチェンジが実施され、5代目となる810型系に移行する。その新型ではUのサブネームが廃止され、ブルーバードの単独ネームに戻ることとなったのである。