三菱ECO-3 【2005~】

新世代電気自動車「i-MiEV」の開発と市販化

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軽乗用車の「i」をベースにEV化を企画

 リベロEVやFTO-EVの研究・開発によって、電気自動車(EV)の技術を多角的に蓄積していった1990年代の三菱自動車工業。様々な走行テストを行い、EVの一般実用化に向けて自信を深めていった同社の技術陣は、2000年代に入ると量産EVの開発に向けて本腰を入れるようになった。

 量産EVのベース車として選ばれたのはリアミッドシップレイアウトを採用する軽乗用車の「i(アイ)」で、エンジンと燃料タンクの代わりにモーターやリチウムイオン電池、インバーター、充電器といったEV関連システムの搭載を企画する。車名については、Mitsubishi innovative Electric Vehicleの略であるMiEVを加えて「i MiEV(アイ・ミーブ)」とすることに決定した。

 i MiEVに採用された主要コンポーネントを見ていこう。原動機は専用開発の永久磁石式同期モーターで、長年に渡って小型・軽量化を模索した逸品。さらに高出力と高効率化も重視し、試験走行を実施する2006年には最高出力47kW、最大トルク180N・m、最高回転数8500rpmにまで到達した。肝心のバッテリーは最新のリチウムイオン電池で、総電圧330V、総電力量16kWh~20kWhを記録する。充電システムについては、一般家庭などでの電源コンセント(100V/200V)に差し込んで充電する方式と急速充電器(3相200V)を使う方式に対応。また、急速充電器は三菱自工と各電力会社とで共同開発し、徐々に高効率化を図っていくこととした。

 i MiEVの試験走行は、2006年11月から東京電力および中国電力と共同で開始される。また、翌2007年には九州電力なども加わった。さらに協力会社に向けたフリートモニター用i MiEVも供給し、実際の使用環境下での様々なデータ収集と解析に取り組んだ。
 一方、三菱自工は2007年開催の第40回東京モーターショーにおいて、i MiEVのほかに「i MiEV SPORT」という走り志向の2ドアモデルも提案する。EV関連システムは基本的にi MiEVと同様だが、フロント・インホイールモーターとS-AWC(Super All Wheel Control)、無線充電システムなどの新技術を採用し、コンパクトEVのさらなる可能性を追求していた。

法人および自治体への販売からスタート

 2009年6月になると、いよいよi-MiEVの量産が始まる。翌7月からは法人や官庁を中心としたデリバリーをスタートさせた。ちなみに、量産化に当たって車名はi MiEVからハイフン付きのi-MiEVに変更された。

 量産モデルの主要コンポーネントには、リチウムエナジー ジャパン製のリチウムイオン電池(計88個の電池セルを直列に接続)と専用開発の永久磁石式同期型モーター(Y4F1型。最高出力47kW/3000~6000rpm、最大トルク180N・m/0~2000rpm)、変速を1段に固定した軽量・小型のトランスミッションを採用。また、高度な車両統合制御技術の“MiEV OS(Operating System)”を組み込んだ。充電システムは普通充電AC200V(15A)/同AC100V(15A)/急速充電・三相200V50kW という3ウェイタイプで、それぞれ約7時間(満充電)/約14時間(同)/約30分(80%)で充電をこなす。一充電走行距離は10・15モード走行で160kmに達した。

個人向け販売は2010年より開始

 2010年4月にはi-MiEVの個人向け販売が開始される。車両価格は法人向けよりも61万9000円安い398万円に設定。政府の補助金制度を活用すると、300万円以下の負担額に収まった。販売方法はメンテナンスリースを基本とし、「三菱アシスト24」による24時間365日のロードサービスも受けることができた。

 i-MiEVは市販デビュー後も着実に進化を続ける。2010年11月には一部改良を行い、車両接近通報装置を新たに追加。同時に、高速走行時におけるモーター音やブレーキ負圧電動ポンプの作動音を低減することで静粛性を向上させた。2011年7月になるとマイナーチェンジを実施し、車種設定の2グレード化(駆動用バッテリー容量10.5kWhのエントリーグレードのMと同16.0kWhの上級グレードのGを設定)やMiEV OSの改良による性能向上、アクティブスタビリティコントロール(ASC)の全車標準化、植物由来材料のグリーンプラスチックの採用などを敢行する。2013年11月には再び一部改良を行い、Gグレードに代わる上級仕様のXグレードの設定(基本性能はGグレードを踏襲しながら車両価格を約90万円値下げ)やMグレードの装備の充実化(同時に車両価格は約19万円値下げ)などを実施した。

 電気自動車の普及促進を図るために車両価格を引き下げ、同時に機能性を高めるための改良を施し続けるi-MiEV。日本における量産EVの先駆モデルは、進化・熟成の道程を着実に歩んでいった。