トヨタデザイン9 【1982,1983,1984】

新発想&新デザインの多目的車とスポーツ車の誕生

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ハイルーフ形状ワゴンボディを採用した乗用4WD車

 1980年代前半のトヨタ自動車は、石油危機や排気ガス規制の後遺症をいち早く乗り切るよう、積極的に新しい車両デザインのクルマを開発していく。その先駆けが1982年8月にデビューした「スプリンター・カリブ」だった。

 “面白4WD誕生”というキャッチコピーとともに登場したカリブは、アウトドアレジャーの足として自在に使えることをアピールする。エンジンはターセル/コルサ系の1452cc直4OHCを縦置き搭載。4WDのギアボックス自体は新規の開発品で、FFと4WDを走行中に切り替えることができた。さらに副変速機を持たない代わりに、非常時用のエクストラローギアを設定する。また、リア懸架にはカローラ系の4リンクを用い、これをベースにパナールロッドを加えた専用リジッドサスを導入した。

 カリブのスタイリングは異彩を放った。ハイトなワゴンボディに大型のクオーターガラス、170mmと高くとった最低地上高など、既存のワゴンとは一線を画すデザインが注目を集める。室内に目を移すと、FWDと4WDの専用切り替えレバー、左上に赤字でEL(エクストラロー)と刻んだシフトノブ、車体の傾斜を示すクライノメーター等がクルマの性格を主張した。フルフラットにできる前席、高さ方向に余裕のあるラゲッジもユーザーの好評を博した。

FRにこだわった名車“AE86”の誕生

 1983年5月になるとカローラ/スプリンターの全面改良が実施される。5代目となる新型は実用性重視のセダン系をFF化する一方、クーペ系のカローラ・レビン/スプリンター・トレノはFR方式を踏襲し、スポーツ性能にいっそうの磨きをかけた。このモデルは後に形式名の “86(ハチロク)”で呼ばれるほどマニアの支持を集める。

 車両デザインは、スポーティかつスペシャルティなイメージを強調したうえで、空力特性の徹底した向上を図る。ボディタイプは2ドアノッチバッククーペと3ドアハッチバッククーペを用意。レビンには固定式ヘッドライトとエアロダイナミックグリルを、トレノにはリトラクタブル式ヘッドライトを装着し、2車の差異化を図った。搭載エンジンは新開発の4A-GEU型1587cc直4DOHCと3A-U型1452cc直4OHCの2機種をラインアップ。サスペンションには前マクファーソンストラット/後ラテラルロッド付4リンクを採用し、ステアリング機構には専用レシオのラック&ピニオン式を組み込んだ。

ミッドシップを身近にしたMR2の誕生

 86に続きトヨタは1984年6月に新たなスポーツモデルの世界を切り開く新型車を発表する。日本初の量産ミッドシップスポーツとなる「MR2」を市場に放ったのだ。

“Midship Runabout 2seater”の略称を車名としたMR2は、若者層を中心ターゲットに据えた“スポーティコミューター”として開発される。スタイリングはウエッジを利かせたコンパクトなボディを基本に、リトラクタブル式ヘッドライトを配した広くて低いフードや面一で包み込むようなカラードソフトフェイシャバンパー、直立したバックウィンドウなどを組み込む。ミッドシップ配置のエンジンは4A-GELU型1587cc直4DOHCまたは3A-LU型1452cc直4OHCを横置きで搭載。懸架機構には専用セッティングの前マクファーソンストラット/後デュアルリンクストラットを導入する。1986年8月にはマイナーチェンジを行い、スーパーチャージャー付4A-GELU型エンジン搭載車とTバールーフ車をラインアップに加えた。

3兄弟それぞれの個性を明確にした上級モデル

 1984年8月になると、ミディアムクラス車のマークⅡ/チェイサー/クレスタのフルモデルチェンジが敢行される。新型で目指したのは“時代をリードする高級・高性能サルーン”の創出。ボディタイプはマークⅡが4ドアハードトップと4ドアセダン、チェイサーが4ドアハードトップ、クレスタが4ドアセダンとし、車両デザインについては3モデルのいっそうの個性化を実施した。

 マークⅡハードトップは、大型フォグランプを一体化した個性的なフロントマスクやリアクオーターに配したクリスタルピラーなどによりダイナミックかつエレガントなプレステージサルーンを表現。同セダンは面一化したキャビン部と6ライトウィンドウの開放的なグリーンハウスにより格調高いハイオーナーカーに仕立てた。

 チェイサーはシャープな水平ラインを基調とした伸びやかで力強いサイドビューや立体的なクオーターピラーなどで高級スポーティサルーンらしい雰囲気を打ち出す。クレスタはフロントグリルと同ラインに配置した角形4灯式ヘッドランプや伸びやかなロングノーズなどにより新感覚パーソナルセダンらしさを強調する。インテリアは、全車でボリューム感のあるスーパーラグジュアリーシートやサテライトスイッチを装着して快適性と利便性を高める。また、ホイールベースの延長やフロアの低床化などによって居住空間自体も従来モデルより拡大させた。新設計のシャシーには、最新のエレクトロニクス技術をふんだんに盛り込む。搭載エンジンは1G-GEU型1988cc直6DOHC24Vを筆頭に計7機種を設定した。