トヨタECO 4 【2001,2002,2003】

様々な可能性を追求した地球環境戦略

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多様な動力源で環境対応車を企画

 地球温暖化の問題が世界規模で注目されるようになっていた2000年代初頭。自動車業界では省エネやCO2削減などが重要な開発テーマとなり、環境負荷の少ない自動車の実用化に鋭意力を注いでいた。その状況下でトヨタ自動車は、多様なアプローチ方法で環境対応車を企画していく。

 動力源については、電気モーターや燃料電池、エンジン+モーターのハイブリッド、リーンバーンおよびD-4のガソリンエンジン、直噴ディーゼルターボエンジン、CNGなどの開発・進化を積極的に推し進める。同時に、エアロダイナミクスを駆使して空気抵抗を低減させたスタイリングやボディおよび構成材の徹底した軽量化、リサイクルやリユース等の拡大展開などを徹底的に練り込んだ。

2001年開催のTMSで先進の環境対応車を披露

 21世紀に向けたトヨタの環境対応車への取り組みは、まず2001年10月に開催された第35回東京モーターショー(TMS)において大々的に公開される。「夢のある新しいモビリティライフ」を念頭に生み出された先進のエコカー群は、多彩な方法で環境性能に磨きをかけていた。

 代表的な3台のモデルを見ていこう。まずは「ES3(イーエスキュービック)」。10・15モード走行燃費47km/L(社内測定値)という超低燃費を実現したうえで、低エミッションと高度なリサイクル技術を結集したクリーンディーゼル車だ。ボディはアルミと樹脂で構成し、車両重量は700kgと軽量に仕立てる。さらに、エアロダイナミクスを駆使してCd値(空気抵抗係数)0.23を成し遂げた。

 動力源は1.4リッター直列4気筒の直噴ディーゼルターボで、無断変速機のCVTを組み合わせる。また、車両停止時のアイドルストップや制動時のエネルギー回生など、ハイブリッド車で培った技術も活用していた。排出ガス対策に関しては新触媒のDPNR(Diesel Particulate-NOx Reduction System)を装備し、ガソリン車の優−低排出ガスレベルに相当するクリーンな排気を実現する。ほかにも、リサイクル性に優れるTSOP(トヨタ・スーパー・オレフィン・ポリマー)をさらに進化させた樹脂素材や植物系生分解性樹脂(バイオプラスチック)などを採用し、環境負荷物質の使用を大幅に削減した。ちなみに、トヨタは2001年4月に自動車リサイクル研究所を発足。リサイクルしやすい車両構造や効率的な解体技術の研究など、循環型の製品設計への取り組みを拡大展開させている。

 次に燃料電池ハイブリッド車の「FCHV-4」と「FCHV-5」。4は高圧水素を、5は炭化水素系のCHF(Clean Hydrocarbon Fuel)を燃料とする。5ではCHFから水素を作り出す新開発の改質器を採用。蒸発器/改質反応器/CO低減部(高温シフト触媒、低温シフト触媒、CO選択反応器)などで構成したCHF改質器は、ユニット自体をコンパクト化し、かつ適切にレイアウトすることで、室内スペースに干渉しない車両床下へのシステム搭載を実現していた。

エコとパワーを同時に進化させた2代目プリウスが登場

 2003年9月になると、トヨタの市販環境対応車が新たな進化を遂げる。ハイブリッド車の先駆モデルであるプリウスが、第2世代に移行したのだ。

 エコとパワーを同時に進化させる“ハイブリッド・シナジー・ドライブ”をコンセプトに開発した2代目プリウスは、4つの革新を特徴としていた。まず、走りの革新。可変電圧システムの採用など制御系を進化させたTHS-Ⅱにより、モーター出力を従来比で約1.5倍に高め、ハイブリッドならではの応答性のよさや力強さを大幅に向上させる。また、世界初の技術であるステアリング協調車両安定性制御システムのS-VSCを組み込んで卓越した操縦性と走行安定性を実現した。

 2つめはスタイリングとパッケージの革新。スタイリングは先進のエアロダイナミックフォルム(Cd値0.26)に一新し、同時にゆとりの室内空間とユーティリティ性能を追求した新しい5ドアパッケージを構築する。内外装の各部デザインに先進ハイブリッド車を強調する未来感を持たせたこともトピックだった。3つめは機能・装備の革新。操作系には指先で軽く操れるエレクトロシフトマチックやプッシュボタンスタートなどを採用し、利便性を大きく向上させる。また、縦列駐車時などのステアリング操作を補助するインテリジェントパーキングアシストやモーターのみの走行ができるEVドライブモード、燃費向上と快適性に配慮した電動インバーターオートエアコンなど、先進システムを豊富に盛り込んだ。

 4つめは環境性能の革新だ。燃費性能は10・15モード走行で世界最高レベルの35.5km/Lを実現。また、平成12年基準排出ガス75%低減レベルも達成する。さらに、リサイクル性能の引き上げや生産から廃棄に至るライフサイクル全体での環境負荷の低減などを実施した。

 2代目プリウスは日本を皮切りに、アメリカや欧州市場などへも投入される。先進の環境対応車をグローバルに展開して、地球への環境負荷を可能な限り低減させる−−そんなトヨタの意気込みが、プリウスの販売戦略に込められていたのである。