ホンダデザイン10 【1995,1996,1997,1998】

質感とユーティリティを磨いたセダン群

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高質ユースフルセダンを標榜したシビック・フェリオ

 1990年代後半の本田技研工業は“クリエイティブムーバー”や“Jムーバー”といった斬新なレクリエーショナル・ビークル(RV)を相次いで発表する一方、既存のセダンモデルも積極的に全面改良し、高品質な車両デザインを鋭意採用していった。

 1995年9月には、第6世代となる“ミラクル・シビック”のセダン版となるフェリオが市場デビューを果たす。セダンボディのフェリオは、ワールドワイドな視点から車両デザインを構築。造形テーマには“高質ユースフルセダン”を掲げ、乗りやすさと確かな存在感を主張するエクステリアを創出した。内装については、快適さや使いやすさをしっかりと形にした“健全パッケージング”をベースに“ヒューマンウェア・インテリア”の発想でデザインを手がける。具体的には、高品質ソフトシェイプのインパネやセンター部に集中配置した機能部品、広がりとクオリティを追求したドアライニングなどを採用した。

3代目レジェンドは“カジュアル・プレステージ”がキーワード

 1996年2月になると、フラッグシップサルーンのレジェンドが第3世代に切り替わる。人間の五感を基準にした“感研究”による高級車造りを実践した3代目は、車両デザインのキーワードとして“カジュアル・プレステージ”を掲げ、高級感がひと目で伝わる内外装を表現した。
 フロントビューでは、クルマの顔であるグリルをしっかり見せる造形とし、同時に量感あふれるボンネットをセットして存在感を強調。サイドビューでは、ボリューム感と伸びやかさの調和したシルエットを構築する。そしてリアビューでは、骨格をシンプルに見せることで堂々とした印象を創出した。また、光沢をもたせた外板塗装やパネルの合わせ目の緻密なフィニッシュなどにより、高質感に満ちたルックスを実現したことも3代目の訴求点だった。

 インテリアは高級感とともにエンターテインメント性を求めたデザインを採用する。インパネはパネル自体にボリューム感を持たせながら、アッパー部とロア部、コンソール部を一体成形でアレンジ。同時に、ロア部にはファブリック張りを施し、脚部の圧迫感を和らげるとともにラグジュアリー感を獲得する。また、装備面では振動吸収タイプの高性能シートやフルオートAC、精度の高い3Dナビゲーションシステムなどの先進アイテムを積極的に取り入れ、乗員のより高い充足感を実現した。

アクティブ&ダイナミックに仕立てた6代目アコード

 ホンダのセダンデザインの刷新は、まだまだ続く。1997年9月には、第6世代となるアコード・シリーズを発売。最大の特長はセダンとワゴンを明確に作り分けたことで、これによりセダンは“国内ベストサイズ”を標榜する5ナンバー規格に回帰した。

 車両デザインについては、セダン独自のアレンジが存分に施される。“アクティブ&ダイナミック”をテーマに手がけたスタイリングは、3ボックスフォルムを基調に彫刻的で立体感のあるグリルや切れ長のヘッドライト、ノーズを短くしたフォワードキャビン、ウエッジを強く利かせたサイドビュー、安定感のあるすっきりとしたロングテールなどを採用してスポーティかつ個性的なルックスを構築する。インテリアは、人とクルマの絶妙なフィット感を踏まえてデザイン。ファンクショナル&スポーツという発想のもと、モジュールタイプの上質なインパネやマグネシウム合金のステアリングホイール、独立3眼式のメーター、静電気の帯電を低減するシート表地といった上級アイテムをふんだんに盛り込んだ。

インスパイア/セイバーはアメリカ工場で生産

 1998年10月になると、上級サルーンのインスパイア/セイバーが新型に移行する。開発は米国のホンダR&Dアメリカズ、生産はホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチャリングが担当。開発コンセプトには“ツーリングラグジュアリーセダン ”の創出を掲げた。

 車両デザインについては、オフショアクルーザーをイメージしたダイナミックなボディラインやフォワードキャビンを基調に、きめ細かな作り込みを実施して高品位なエクステリアを実現する。また、ボディ長と幅を従来型と同レベルとしながら、室内前後長を20mm、幅を75mm拡大してゆとりの居住空間を構築。インテリア自体も、スラッシュ製法を用いたラウンドシェイプのインパネや本革&木目調コンビのステアリングホイール、ウレタンフォームを最適配置したシートなどを組み込んで上質かつスポーティなイメージに仕立てていた。