ランドグライダー(コンセプトカー) 【2009】

スタイリッシュで楽しいパーソナルモビリティの新提案

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地上を滑空するグライダーEVの提案

 ゼロエミッションEVのリーフが正式デビューした2009年の東京モーターショーで、日産はもう1台のゼロエミッションモデルを提案した。パーソナルモビリティの新たな可能性を追求した「ランドグライダー」である。ランドグライダーは都市部における交通手段の方向性を示唆するもので、単なるデザイン研究ではなく、機能を含め高い完成度を持っていた。ゼロエミッションのEVはパワートレーン配置の自由度が従来の内燃機関と比較して数段高くなる。ランドグライダーは、そのメリットをフルに生かして開発されたモデルで、コンセプトカーとはいえ機能性も十分に煮詰められた現実味ある近未来車だった。

 ランドグライダーは、そのネーミングのように地上を滑空するグライダーのような軽快なイメージを持っている。特徴的なのはそのボディサイズだ。全長が3100mmと短いだけでなく、幅を1100mmと狭くし、都市部での俊敏性、利便性を計算しているのだ。この幅の狭さによって、ランドグライダーは4輪車ながら、2輪のモーターサイクルのようなアクティブな印象を訴求する。

 室内レイアウトは前後タンデム乗車の2名乗り。都市部での使用に割り切っているとはいえ、2名乗りであればさまざまな状況に対応できそうだ。ちょっとした手荷物なら2名乗車時でも積み込みが可能なので、ファミリーユースを除けばランドグライダーをファーストカーとして使うのも現実的な選択である。

モーターサイクル感覚の新鮮リーン体験!

 ランドグライダーの魅力は走りにある。コーナリング時に車体がモーターサイクルのように内側にリーンするのだ。通常の4輪車は外側の車輪が沈むのだが、ランドグライダーはその逆。まったく違う感覚が味わえる。しかもモーターサイクルはライダー自身がリーン状態を作り出さなくてはならないのに対し、ランドグライダーは、搭載したセンサーが、走行速度、舵角、ヨー率などを感知して最適なリーン傾斜角度を自動的に作り出す。従来どおりのステアリング操作で、車体が水すましのように機敏に反応し理想的なリーンを披露してくれるのである。自らコーナーに切れ込んでいくかのようなリーンコーナリングは、従来とまったく違う3次元的な楽しさに溢れているに違いない。ちなみに車体の最高傾斜角度は17度。フェンダー部はリーンに応じて可動するデザインになっている。コーナリング時のランドグライダーの姿は、まるで意思を持った生き物のようなイメージを与え、なかなかスポーティである。

衝突を回避する先進システムも搭載

 パワートレーンはシンプルだ。床下に配置したリチウムイオン電池によって給電する2つのモーターが左右それぞれの後輪を駆動する。また非接触式の充電システムを採用しているので、近い将来スーパーマーケットやコインパーキング、高速道路のサービスエリアなどの充電インフラが整備されると、車体に充電器を接続することなく充電が可能だ。1充電当たりの航続距離や最高速などのデータは未公表だが、都市部で使うパーソナルモビリティであれば1充電で50kmほど走れれば十分。トップスピードも100km/hほどで満足できそうだ。そう考えると現状でも技術的なハードルはそれほど高くなさそうだ。

 ランドグライダーは安全性についても新たな提案を盛り込んでいる。カーロボティクス技術を応用した衝突回避システムを搭載しているのだ。これは群れを成して整然と障害物を回避する魚にヒントを得て開発したもので、車体に搭載したセンサーが他の車両を探知し、通信して衝突を避け、目的とする方向に車両を誘導する。ドライバーの自由度を確保したうえで、衝突を避ける自動運転思想を盛り込んだ安全デバイスである。
 ランドグライダーを見ていると、近未来のカーライフシーンはますます楽しくなりそうだと期待が高まる。ゼロエミッションと先進の電子制御技術が生み出すワクワクする世界が、間もなく現実のものとして走り始めるのだ。