ビスタ・リフトバック 【1982,1983,1984,1985,1986】

ルーミーキャビンの多用途FFモデル

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セダンに次いで5ドアが誕生

 かつてトヨペット・コロナのバリエーションモデルとして5ドアセダン(1965年デビュー)があった。それから17年を経た1982年、今度はカムリの兄弟車であるビスタのバリエーションモデルとして5ドアモデルが登場した。
 ステーションワゴンやバンなどとは異なる、スタイリッシュかつ実用性の高い万能車として5ドアセダンのスタイルを採用した、ビスタのリフトバックであった。

 ビスタの大きな特徴は、トヨタ車として初めて横置きエンジンによるFF方式を採用したことだった。意外なことだが、横置きエンジンによるFFという方式を、トヨタはこのビスタ/カムリまで採用することがなかった。スペースユーティリティを徹底追及する小型車を生産しなかったこともあるが、メカニカルな部分での信頼性と耐久性の点で、エンジン横置きのFFはトヨタの水準には達していなかったということなのかもしれない。

実用的なボディスタイルが魅力

 リフトバックと名付けられたビスタの5ドアセダンは、1982年8月にラインナップされた。フロントに横置きされるエンジンは2種あり、いずれも水冷直列4気筒SOHCで、1832cc(出力100ps/5400rpm、トルク15.5kg-m/3400rpm)および1995cc(120ps/5400rpm、17.6kg-m/4000rpm)のユニット。これを横置きとして前輪を駆動する。トランスミッションは5速マニュアルとOD付き4速オートマチックだが、特に2000VXに装備される ATは電子制御を採用した新型とされた。

 スタイリングは個性的。4ドアセダンのスタイリングは、トヨタ的なバランスに優れた、しかしこれといった特徴のないものだが、リフトバックではバンパーレベルまで大きく開くテールゲートや分割可倒式のリアシートなど、並みのステーションワゴンに匹敵する充実した装備を持ち、乗用車の要素とワゴンの要素を高い次元で統合したものとなっている。

 スタイルの良さは、日産のスタンザ・リゾート/バイオレット5ドアハッチバック、あるいはホンダ・クイント1600TEなど同種のライバルに比べて際立っており、ビスタというブランドの存在を強くアピールしていた。価格は、169万9000円から186万8000円と、そのサイズとパフォーマンスから考えれば十分に納得できる範囲に収められていた。

ひとクラス上の居住性を実現

 エンジン横置きFF方式の恩恵は、の室内空間に如実に表れた。ホイールベースは2600mmでクラス最長。同じFFのアコードよりも150mmも長い値となった。室内長×幅は、1875×1415mm。ひとクラス上のマークⅡよりも幅広く、室内長はクラウンよりも長いスペックを誇った。
 ビスタ・リフトバックは、前後席ともゆったりとした居住スペースを持ち、ラゲッジスペースは広大。セダンとしてもワゴンとしても一級品といえるマルチユースフルな存在だった。キャラクター的にはジェントルな印象ながら、パッケージ面で見ると、当時世界で最も高効率な1台だった。欧州車を凌ぐスペース性を誇った個性派のトヨタ車だった。