マークIIワゴン 【1984,1985,1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

「いぶし銀」的風格。ロングライフワゴン

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セダンと同等装備の上級/上質ワゴン

 1968年9月に、トヨタはコロナの発展モデルとして、ひと回り大きなボディーを持ったコロナ マークⅡをデビューさせた。日本のモータリゼーションの拡大と発展に伴い、ユーザーの上級車指向が強まったこともあり、同じ小型乗用車でもサイズアップと性能向上が求められるようになっていたからである。マークⅡ(MarkⅡ)の車名は、1957年に登場したオリジナルのコロナ(マークⅠ)の派生車種であることを意味していたのだが、いつしかマークⅡそのものが独立したモデル名として使われるようになった。3世代目や4世代目になっても、車名はマークⅡのままだった。ちなみに、マーク(Mark)は、英国軍が兵器や軍用車両の改良モデルに付けた名で、オリジナルモデルに対して次世代の改良モデルにマークⅡ、マークⅢの呼称を付けたのである。このあたりの経緯は極めて日本的で不思議な現象であった。

 マークⅡは、デビューするや爆発的なヒットとなった。1984年8月に第5世代となるX70系が登場する。ボディは5ナンバーサイズいっぱいの全長4690㎜×全幅1690㎜×全高1385㎜、ホイールベース2660㎜となり、クラウンにも匹敵するものとなっていた。また、この第5世代のモデルから、それまで車名に付けられていたコロナの呼称が消え、単にトヨタ マークⅡとなっている。当然、X70系マークⅡには4ドアステーションワゴンがあり、商用車であるバンとは異なり、エンジン仕様や内装、装備などはセダン系に等しいものとなっていた。

ワゴンは3兄弟のうちマークⅡにのみ用意

 X70系となったマークⅡには、5人乗りの4ドアセダン、4ドアハードトップに加えて、4ドアステーションワゴンおよび4ドアバンがあった。マークⅡの兄弟車であるチェイサーやクレスタにはステーションワゴンやバンは展開されていない。

 マークⅡのステーションワゴンは、セダン/ハードトップのデビューより3カ月遅れの1984年11月に登場している。ラインアップは、ワゴンが1グレード、バンが3グレードだった。ワゴンはLGグレードのみで、1G-EU型1988cc直列6気筒SOHC(130ps/17.5kg-m)エンジンを搭載。バンは、2タイプのエンジンを用意し、2Y-J型1812cc直列4気筒OHV(95ps/15.5kg-m)には、GLとDXの2グレードを設定。2L型2446cc直列4気筒SOHCディーゼル(83ps/17.0kg-m)には、DXを設定した。バンGLの価格は、5速MTが122.4万円で3速ATが126.2万円。ワゴンLGは、5速MTが165.2万円で4速ATが173.1万円だった。

 ワゴンのエンジンは1988年8月にハイメカツインカム機構を採用した、1988㏄の直列6気筒DOHC(1G-FE型、135ps/5600rpm)に積み換えられた。1990年9月には特別仕様となるLGグランデエディションを設定。標準仕様のLGの上級モデルという位置づけになる。

オーソドックスなFRレイアウトを採用

 トップモデルであるLGグランデエディションは、全長4650㎜、全幅1690㎜、全高1440㎜、ホイールベース2660㎜のボディサイズを十分に生かした、スクエアなスタイルを持っており、サイズ以上に伸びやかなイメージを感じさせた。エンジンフードや左右のフロントフェンダー、スポイラー一体型のフロントバンパーなどをセダン系と共用し、スタイリッシュな外観となった。フロントのフォグランプは標準装備となる。細く仕上げたB、C、Dの各ピラー部分で前後長の長さを強調していた。

 インテリアでは、木目調パネル、カセットデッキなどが標準装備となる。また、1996年8月以降のモデルでは、安全性向上のため運転席側だけだがSRSエアバッグが標準装備とされ、後席3点式シートベルトやドア内部にサイドインパクトバーも標準装備となっていた。この他、ウォッシャー装置付きリアツインワイパー、フルオートマチックエアーコンディショナー、前後席パワーウィンドウ、集中ドアロック、チルト機構付きステアリングも装備。駆動方式はセダン系同様フロント縦置きエンジンによる後2輪駆動で、4輪駆動仕様の設定はない。トランスミッションは4速のオートマチックのほか5速マニュアルも選ぶことが可能だった。標準装備されるタイヤは前後とも185/70R14サイズのラジアルタイヤで、ホイールはスチール製だがオプションでアルミホイールの装着も可能となっていた。1997年3月にワゴンおよびバンの生産を終了し、ワゴンはマークⅡクオリスへ、バンはカルディナシリーズへと受け継がれた。

ライフスタイルのシンボル

 少なくとも1970年代初頭の時期まで、ステーションワゴンは装備を豪華にした商用車の一部くらいにしか認知されていなかった。しかし、乗用車をベースとした本格的なステーションワゴンが登場すると、アウトドアスポーツの流行が拡がったことにも助けられ、ステーションワゴンの市場は急速に拡大する。とくにサーフィンやスキー、キャンピングなどには、その大量の荷物と人員を同時に運べる便利さから、若者を中心に人気を集める。ライトバンやピックアップなどと同一視されていた時代と異なり、ワゴン車に乗る抵抗感はなくなっていたのである。

 こうしたことは世界的な傾向であり、各メーカーはこぞって豪華な仕様とハイパワーなエンジンを搭載した高性能なモデルを市場に投入する。それは、日本独自のモデルである軽自動車から、ドイツのメルセデス ベンツ、アウディ、小型ステーションワゴンのパイオニアであるスウェーデンのボルボ、英国のローバーなどなど輸入車の多くにまで及び、1990年代までには大きなマーケットを形成することになる。ステーションワゴンは豊かで余裕のあるライフスタイルのシンボルとなったのだ。マークⅡワゴンは、国産ワゴンの代表的な存在となった。記憶に残る名車のひとつだ。