ジャズ 【1994,1995,1996】

いすゞ製ホンダ・ブランドの代表

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いすゞミューをホンダ車として販売

 ホンダ・ジャズは、生粋のMaid in Hondaではない。1993年10月から1996年12月まで、いすゞ自動車から同社の多目的SUVである「いすゞ・ミュー」のOEM(相手先ブランド販売)供給を受け、ホンダのブランドで販売していたモデルだ。したがって、内容としてはいすゞ・ミューと同一の車種である。
 1980年代末ころから、ホンダは販売車種の拡充と販売網の拡大を目指して、自社ブランドの充実を図る。自社開発の車種についてはグレードを増やすことによってバリェーションを揃え、自社開発が及ばない車種については、他社からのOEM供給によって穴埋めをしたのである。ジャズ(JAZZ)は、当時ホンダが全く手付かずの分野であったSUVのジャンルを埋めるべく、いすゞとの間にOEM供給契約を締結したことで生まれた車種である。いすゞ以外にも、ホンダはアメリカのクライスラー社との間に同様のOEM契約を締結し、SUVとして定評のあったJeepチェロキーを輸入していた(ただしホンダ・ブランドは名乗らず、Jeepとして販売)。

OEMが持つメリットとは!?

 ホンダにとっては、OEM契約によって車種を増やすことは、その間に独自の設計やデザインを行って、より完成度の高いモデル開発が出来ると言うメリットがあった。一方、OEMの相手方も販売台数の上乗せが出来ることになる。OEMはこの時期のホンダには手馴れた手段だったのだ。ミューやジープ以外にも、ホンダは1993年11月から提携関係にあった英国のローバー社との間でOEM契約を締結、傘下のランドローバー社のディスカバリーをホンダ・クロスロードの名で販売。1994年にはミューと同じいすゞ自動車から同社のビッグホーンをOEM導入し、ホライゾンの名で発表する。ホンダとしては、高まる一方のSUVのブームに乗り遅れることを嫌ったのだろう。この間にも、供給されたモデルの最終検査などはホンダ自身の工場で行っていたので、SUVの開発に関する有形無形のノウハウを得ることが出来たのだ。これはホンダにとっては大きなメリットであった。

パワフルなディーゼルターボを搭載

 ホンダ・ジャズは、エンブレムやボディカラー、装備品などの一部違いなどを除いていすゞ・ミューに等しい。搭載されるエンジンもいすゞ版と同様に排気量3059ccの直列4気筒OHCのターボチャージャー付きディーゼル・エンジンを搭載していた。最高出力は120ps/3600rpm、最大トルク27.5kg・m/2000rpmの性能も全く同じである。駆動方式はパートタイム4WDであり、信頼性及び耐久性の高さは折り紙つきであった。ボディサイズにも変更はなく、ホイールベースは2330mm、全長4135mm、全幅1780mm、全高1670mmである。外観上でいすゞ・ミューと異なる部分は、ジャズのために特別装備されたアルミホイール(タイヤサイズは前後とも245/70R16)、ブラックアウトされて意匠も変わったグリル、その中央に付けられた大型のホンダのエンブレム程度。室内では、ドア内装のデザインがホンダらしい軽快なものとされ、違いを強調するものとなっていた。その他、いすゞ・ミューには存在しないホンダ独自のボディカラーも用意された。
 しかし、一見合理的なOEMも、独自開発の遅れに対する一時しのぎに過ぎないことは明白で、ホンダも独自にSUVの開発を進めており、それは1995年10月に登場した初代のCR-Vとなって実を結ぶことになる。CR-Vには、OEM時代に吸収した先達たちの4WD技術が多く反映されており、ホンダはかなり高いレベルで4WDモデルを完成することが出来たのであった。他人のフンドシで相撲を取ることも、決して無駄ではなかった。