セドリック 【1975,1976,1977,1978,1979】

クリーンな排気ガスを実現したフラッグシップ

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NAPSシステムできれいな排気ガス実現

 1975年、日産自動車は高級車シリーズであるセドリック(そして兄弟車のグロリア)のフルモデルチェンジを行う。車両の位置付けは基本的に旧型のままだったが、ボディースタイリングやエンジンメカニズムに大幅な変更を加えていた。形式名も旧型の230から330となり、新型車であることを強調する。
 最も大きな変化はエンジンメカニズムで、当時、世界で最も厳しかった日本の排出ガス規制「昭和50年規制」に対応した。NAPS(Nissan Anti-Pollution Systemのイニシャル)と呼ばれる新しい排気ガス浄化システムを搭載したのだ。

パワフルな2.8Lユニットが登場

 NAPSは、エンジンと燃料供給システムの改良により排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の発生を低減。同時に白金を用いた酸化触媒を装着することでHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)をCo2(二酸化炭素)とH2O(水蒸気)へと変換するシステムだった。セドリックに先立って、プレジデントにすでに採用されていたものだが、プレジデントは少量生産車だったから、このセドリックが本格クリーン排出ガス車の量産第一弾になった。NAPSシステムは、セドリックと兄弟車のグロリアで違いはない。

 エンジンのバリエーションは2.0リッターと2.8リッターの2種となった。最上級モデルの排気量を188cc拡大し、2753ccとしたのはNAPSの装着によるパワーダウンに対処するためだった。そのL28型の直列6気筒SOHCエンジンの最高出力は140ps/5200rpmである。2.0リッター仕様は排気量1988ccで115ps/5600rpmとなった。トランスミッションは3速オートマチックおよび4速マニュアルで、シフトレバーの位置はフロアとコラムを車種により選択出来た。サスペンションやブレーキなどは旧型と変わりはない。

抑揚を強調したスタイリングを採用

 ボディースタイルは一新され、特にラジエターグリルとリアエンド、フェンダーラインが抑揚の強い形状となり、独特の雰囲気を感じさせる。余りに装飾的なデザインのために、一部のユーザーからクレームが付けられたほどであった。

 ボディ仕様は4ドアセダンのほか4ドアハードトップと2ドアハードトップおよびバンがあった。インテリアはこのクラスの乗用車に共通する豪華なもので、最高級グレードには当時考え得るあらゆる快適装備が標準で備えられていた。シートや内装にファブリック(織物)を多用していたのが時代性を表している。おそらく今日だったら高級仕様は、シートや内装は全て革張りとなるはずだ。
 モデルバリエーション13種で、タクシーなどの営業用としてディーゼル・エンジンやLPG(液化天然ガス)仕様などもあった。価格はセダン・スタンダードの108万5千円から、4ドアハードトップ 2800GSLの218万5千円までとなっていた。

日産の技術力を象徴した4ドアハードトップ

 330型セドリックのフラッグシップはピラーレス構造の4ドアハードトップだった。セドリックなど高級アッパーモデルへのハードトップの設定はライバルのクラウンが先行(1968年)したが、パーソナルイメージと実用性を両立した4ドアハードトップはセドリック(そしてグロリア)が先陣を切る(1972年8月設定)。

 セドリックは330型でもピラーレス構造で4ドアハードトップを継承した。メーカーではドア回りの構造を7層構造とし、40万kmにも及ぶ悪路耐久テストや10万回に及ぶドア開閉テストでピラーレスでも高い安全性を実現したとアピール。すでにこの当時はエアコンの普及により窓を開ける機会が減っていたから、ピラーレスでもピラードタイプでもユーザーにとっては大きな違いはなかった。しかしイメージ面では大きな差だったに違いない。日産はセドリック以外にもローレルやブルーバードなどでピラーレス構造の4ドアハードトップを展開し、高い技術力をアピールした。