カローラ 【1983,1984,1985,1986,1987】

FFに進化した世界のベストセラー

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FFレイアウトのセダンとハッチバックの新戦略

 1983年3月、カローラは誕生から17年で生産累計1000万台を突破する。生産累計1000万台の金字塔は、カローラが日本の大衆車市場を牽引してきたばかりでなく、トヨタの看板車種として世界で愛される国際車に成長したことのなによりの証明だった。それだけに直後の1983年5月に登場した5代目モデルは非常に意欲的な内容を持っていた。

 5代目カローラ・シリーズは2種類の駆動方式を使い分け、ユーザーニーズに合わせた最適設計を実現する。ファミリーユースを重視する4ドアセダンと新設定の5ドアハッチバックは、スペース効率に優れたエンジン横置き方式のFF。パーソナル指向のクーペであるレビン・シリーズは、エンジン縦置きのFR方式を採用したのだ。駆動方式に合わせ内外装はもちろんメカニズムの細部まで専用設計を施し、ワールドカーらしく世界のどのマーケットでも愛される高い完成度を実現していたのは言うまでもない。ちなみに兄弟車として販売系列が異なるスプリンター・シリーズを用意していたのも従来どおりだった。

世界最先端をキーワードに開発!

 FFレイアウトを採用した4ドアセダン&5ドアハッチバック系の開発コンセプトは「世界の最先端をいくベストフィット・ファミリーカー」。具体的には①先進的でオリジナリティの高いスタイリング。 ②大衆車を超えた広く快適な居住空間。 ③高性能・低燃費を極めたエンジン。 ④国産水準を超えたハイパフォーマンス。 ⑤世界のベストセラーカーとしての高品質を重点目標に掲げた。世界の定番ブランドに成長したカローラらしく、どの項目とも新たな価値を提案しようとした開発陣の強い意思が感じられた。

 スタイリングは、滑らかな面構成を持つエアロフォルム。従来モデルより30mm長い2430mmのホイールベースを持ち、セダン&ハッチバックともにローノーズ&ハイデッキにまとめていた。メーカーでは明言していないがスタイリングにはG・ジウジアーロが関わったという噂が根強い。シンプルでありながら適度な存在感があり、世界のどこで見てもカローラと分かるグッドスタイリングである。とくに5ドアハッチバック車はCd値=0.35というクラストップ級のエアロダイナミクス性能も獲得していた。

FFの利点を生かした快適な室内

 広く快適な居住空間という点でも群を抜いていた。スペース効率に優れたFF方式の利点をフルに活用していたからだ。従来まであったプロペラシャフトを通すフロアトンネルがなくなり、広いウィンドー面積の効果もあり実に開放的な空間を実現していた。

 室内長1810×幅1380×高1160mm(4ドア)のスペースは前後席に身長180cmのパッセンジャーが座っても余裕たっぷり。5ドア車の一部グレードではクラス初のオールフラットシートを採用しユーティリティ面にも磨きをかける。静粛性面でも防振性に優れたボディ構造の開発や大容量マフラーの採用でクラスを超えた快適性を実現したのもポイントだった。

大衆車世界初の4速ATを設定

 エンジンは4種類の新開発ユニットを搭載する。5ドアハッチバックに設定した1587cc仕様の4A-ELU型は電子制御インジェクションを組み合わせ100ps/14.0kg・mをマーク。大衆車クラスとしては世界初の電子制御4速オートマチックも選べ、パワフルな走りと燃費に優れたイージードライブ性を高次元で融合した。主力となる1452ccの3A-LU型(83ps/12.0kg・m)と1295ccの2A-LU型(75ps/10.9kg・m)の2ユニットでは世界初のSCV付きヘリカルスワールポート、アイドルリーンシステムを採用。クラストップの低燃費と出力をマークした。

 ハンドリングも優秀。新開発の4輪ストラット式サスペンションと、シャープなラック・アンド・ピニオン式ステアリングによりキビキビとしたフットワークを実現。欧州車に迫るフットワークを見せつけた。品質の面でも様々な環境下での徹底したテストの実施で卓越した信頼性を獲得する。さらに500件以上の特許&実用新案を盛り込むことでライバルを上回るクオリティを身に付けた。
 FFに大変身した5代目のカローラは、伝統の信頼性や快適性、経済性といった魅力に加え、広い室内空間や、走りの楽しさといったアドバンテージを盛り込んだ“攻めのカローラ”と言えた。完成度の高さは、日本のクルマ作りの成熟を端的に示していた。