バネット 【1978,1979,1980,1981,1982,1983,1984,1985】
小型ワンボックスのヒットモデル
1970年代に入って本格的に浸透し始めた日本のアウトドア・レジャーの広がりへの対応に積極的だったのがチェリー・キャブ/サニー・キャブの小型ワンボックスをリリースしていた日産自動車だった。同社の開発陣は早速、新型マルチパーパスビークルのプランを立てていく。ちなみに当時の開発スタッフによると、日産の開発陣がこの種のクルマに積極的に取り組んだのは、「遊び人が多かった」からだという。日産の開発拠点は神奈川県。山や海が身近にあり、最新のアウトドア・レジャーに没頭する社員が非常に多かった。自分でも使える快適で利便性の高いキャブオーバー車を作りたい−−そんな動機が、開発陣の心を駆り立てたのである。
日産の新世代ワンボックスとなるC120型は、まず1978年10月にチェリー・バネット/サニー・バネットがデビューする。1980年3月には日産系列店向けのダットサン・バネットも追加された。3車の違いはフロントマスクやエンブレムのみ。フロントマスクに関してはチェリー・バネットがシルバーのヘッドライト枠に丸型2灯、サニー・バネットはブラックのヘッドライト枠に丸型2灯で、さらにヘッドライトの間にガーニッシュを組み込んでいた。後に追加されたダットサン・バネットはメッキタイプのヘッドライト枠に丸型4灯を採用する。
C120型はバンとトラック、そして乗用モデルの「コーチ」を設定していた。ファミリーユーザーが注目したのは本格ワゴンのコーチで、アウトドア・レジャーの足として大いに活用される。
このユーザー指向を読み取ったメーカー側は、次第にコーチの装備充実やラインアップの拡充を図っていく。1980年6月には「コーチSGL」を設定。角型ヘッドランプや専用デカール、電動サンルーフ、回転対座シートの採用など、内外装に磨きをかけた。さらにZ20型2Lエンジンを搭載する「コーチSGX」も追加し、ユーザーの選択幅を広げている。81年6月には、新世代ディーゼルのLD20型2Lエンジンを採用したモデルもラインアップに加えた。
順調に販売成績を伸ばすバネット・シリーズ。しかし、開発陣はまだまだ満足していなかった。もっと利便性が高い本格的な乗用ワンボックスを造りたい−−。その意気込みは、1982年10月に登場する新モデルで華を咲かせる。バネットのボディを一回り大きくして新意匠のインスツルメントパネルを装着し、足回りのセッティングも大幅に見直した上級シリーズの「バネット・ラルゴ」を追加したのだ。乗用ユースでの快適性に的を絞ったバネット・ラルゴのパフォーマンスは、従来のワンボックスワゴンとは一線を画していた。見栄えがよくなった内外装の演出も、ユーザーから好評を博す。やがてバネット・ラルゴは、国産乗用ワンボックスのベンチマークに位置づけられるようになった。
C120型バネットは1985年9月にフルモデルチェンジを実施し、新型のC22型へと移行する(トラックだけは1988年までC120型を継続生産)。蓄積されたワゴン造りのノウハウはC22型でも発揮され、後に単独モデルとなるセレナやラルゴに昇華していったのである。